不摂生なあなた、失明していいの?

前回に引き続き糖尿病回です。糖尿病が進行すると失明するおそれがあるというのは有名な話ですね。今回は糖尿病による失明のメカニズムと、その他急性合併症について解説していきます。

失明も壊疽と同じように、血管障害に起因します。

高血糖により血流障害のメカニズムは前回説明しましたね。微小血管が損傷し血流が滞ります。その際、血流不足を補うため、網膜の表面から硝子体へ向かって新生血管が生じるのですが、この新生血管がクセモノなんです。突貫工事で作られたこの血管は壁が薄く、正常な構造を持たないため非常に脆く破れやすいです。そのため、眼球の動きや硝子体の収縮によって引っ張られると簡単に破れて目の中で出血します(硝子体出血)。

また、新生血管とともに線維組織が網膜の表面に張り付くように生じます。この組織は自然に収縮する性質があり、この力により網膜が硝子体から剥がれてしまうのです(牽引性網膜剥離)。

さらに、増殖した血管が眼内の血管の出口(隅角)を塞ぎ、眼圧が急上昇し、視神経を破壊してしまいます(新生血管緑内障)。

以上の仕組みにより眼球にダメージが蓄積し、失明が起こります。

糖尿病は壊疽や失明といった慢性合併症が有名ですが、急性合併症も存在します。

まず挙げられるのは糖尿病ケトアシドーシスです。

通常、我々の体はグルコースをエネルギーとして使いますが、細胞がそのグルコースを取り込むためにインスリンが必要になります。しかし、糖尿病(特に1型糖尿病)の患者はインスリンの分泌が不足しておりグルコースをエネルギーとして使うことができません。その際体は代替エネルギーとして脂肪を分解し始めます。この過程で生じるケトン体が血中に蓄積し、血液が酸性に傾きます。これが糖尿病アシドーシスです。

初期症状としては激しい口渇や倦怠感、体重減少が、進行症状ではクスマウル呼吸(深く大きな呼吸)、呼気のケトン臭(甘酸っぱい臭い)、意識障害があります。数日〜1週間で症状は進行します。放置、重症化すると命に関わりますが、適切に治療すれば回復可能です。

他に挙げられる急性合併症は高浸透圧高血糖症候群があります。

著しい高血糖により血液の浸透圧が上昇し深刻な脱水症状を引き起こす状態です。高浸透圧高血糖症候群ではケトン体はほとんど増加しません。

主な症状としては口渇、意識の混濁、昏睡、痙攣があります。致死率は10〜20%で、適切な治療が行われなければ死亡するリスクが高い非常に危険な病気です。

以上、2回に分けて糖尿病の症状とそのメカニズムについて解説しました。糖尿病の患者数はここ数十年で右肩上がりに増えています。決して他人事ではない身近な病気です。改めて糖尿病の恐ろしさを知ってもらうことができたら幸いです。

ちなみに日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、「糖尿病」の名称を英語由来の「ダイアベティス」へ変更・併記する案を2023年9月に発表しました。尿に糖が出るという誤解や、ネガティブな偏見をなくすのが目的です。現状、まだ正式変更は行われておらず、提案・検討段階です。

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